洞窟学
日本の石灰岩
日本には先カンブリア時代(5億7千万年以前)から新生代第四紀(現在)までに形成された
石灰岩が分布しています。個々の石灰岩の規模は小さいため、石灰岩地域の総面積は国土の
約0.4%にすぎませんが、北海道から沖縄・小笠原まで、日本各地にさまざまな石灰岩が見られます。
古生代から中生代に形成された石灰岩の多くは太平洋中の生物礁起源で、海洋プレートの
移動とともに日本列島にたどり着いたものです。新生代新第三紀〜第四紀(現在)の新しい
石灰岩は、おもに隆起サンゴ礁として南西諸島に分布します。
カルスト地形がよく発達する大規模な石灰岩台地は多くありませんが、山口県の秋吉台は
カルスト台地の代表例です。このほかに、福岡県の平尾台や岡山県の阿哲台などが知られています。
日本の洞窟
日本の洞窟は、石灰岩地域に数多く分布します。また、火山列島でもあり、富士山や八丈島
などに溶岩洞窟が多数あります。この他にも,海岸沿いには海蝕洞などの洞窟があります。
総延長が1kmを越える洞窟が73、深さ100mを越える洞窟が37確認されています。
また、観光洞も全国に80以上あります。
洞窟学の分野
洞窟学は、様々な分野の研究のうち、洞窟に関連するものを集めて出来た学問です。
したがって、下記に示すような様々な分野での研究が関わっている。
- 地理学
地形分野では、石灰岩地域に見られるカルスト地形や、洞内における溶食地形等、
洞外・洞内におけるさまざまな地形形態を研究します。また、水文(すいもん)分野で
は、洞窟内外での地下水の作用や、地下水の集水域から洞窟の規模を予測する研究をします。
- 地質学
洞窟の母岩・地質構造・造洞営力など洞窟の誕生から現在に至る洞窟の形成発達に
関する研究や、洞窟内の鍾乳石・鉱物・堆積物の解析から古環境を明らかにする研究
などが進められています。
- 古生物
古生物学の分野では、洞窟から発見される化石の調査・研究を行っています。日本
の洞窟からは、ナウマンゾウ、オオツノジカで代表される、現在、見ることのできな
い絶滅動物の貴重な標本が数多く発見されています。これらの研究は、生物進化史の
空白を埋める重要な研究領域となっています。また石灰岩洞窟の母岩である石灰岩か
らは,数多くの化石が発見されており、洞窟の形成に密接に関わる石灰岩の形成、お
よびその周辺地域の地質の解明もあわせて行っています。
- 生物学
洞窟や地下水には、地上の生物と異なり、目の機能を失ったり体表の色素が少ない
特殊な生物が生息しています。コウモリなどの洞窟と外界とを行き来する生物などを
含めて、これらの生物の生態や形態などを研究します。また、医療や産業の新たな可
能性を秘めた資源として注目されている洞窟内微生物も研究対象となっています。
- 人類学・考古学
岩陰遺跡に代表されるように、洞窟の入り口付近は人類の生活の場として活用され
てきました。発掘調査により、人類の営みを年代ごとに明らかにすることを目的とし
ます。
- 物理学・化学
洞窟内大気の流れ,気温,湿度などを流体と熱の移動としてとらえ,それらの現象
を理論的に解析します。古地磁気や放射能を用いて、鍾乳石の年齢を決める試みも行
われています。また、洞窟や鍾乳石の形成には化学反応が関与しますから、カルスト
現象全般を化学反応として理解するた研究が進められています。
- ケイビング・探検技術
洞窟探検(ケイビング)をする上で必要な事柄を取り扱います。守備範囲は広く、
ケイビングを行なうにあたって必要な知識、技術、情報、管理、危機管理、コミュニ
ケーション、渉外など多くの内容を含んでいます。
- 火山洞窟学
火山の噴火で出来た洞窟を研究する新しい分野です。溶岩洞窟の成因の解明や、
種々の生成物、鉱物、および生物の研究が行われています。また、最近は溶岩樹型の
研究を世界に先駆けて始めております。世界の火山洞窟学者が連携して研究を進めて
います。
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